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映画『告白』鑑賞記。

話題の映画『告白』を観た。

レイトショーを一人で観たので、体に逃れようのない重いものと、怒りに似た疑問符が残った。

中島哲也監督の作品が好きで、先日『パコと魔法の絵本』のDVDを観たばかりだったので始まった時、
「え?なにこれ?ずっとこの感じなの?」と驚いてしまった。

『嫌われ松子の一生』みたいに“壮絶な話を笑いと涙でポップに描く”のかと思いきや色調はグレー。

残酷なまでに美しいグレー。

しかし、観終わってしばらくして意味をずっと問い続けた時、その意味が私なりに解釈できた気がする。


ストーリーは松たか子さん扮する中学生の担任教師の告白からスタートする。
どうやら終業式の後のホームルームらしい。

その設定は予告で知っていたけれど、驚いたのは生徒が全然先生の話を聞いていない事。

「私の娘はこのクラスの生徒に殺されました。」と告白するシーンですら、生徒たちは犯人は誰かというメールをして盛り上がっている。

犯人はすぐに明かされて“少年A”“少年B”と名付けられる。しかし彼らは13歳なので法的責任を問われない。
担任教師が学校を去った後、二人の人生はそれぞれの形で崩れ始める…。

とにかく残酷なシーンが多く、ホラーサスペンスを見慣れない私にはかなりキツかった。

でも一番恐ろしかったのは、
頭脳明晰な少年Aでもなく、
弱虫の少年Bでもなく、
「うちの子は悪くない」と言い続ける過保護なBの母親でもなく、
復讐をする担任教師でもなく、
無邪気で罪な男性教師でもなく、
いじめに参加しない少女Aでもなく、

クラスメート達だ。

今思い出しても吐き気がするくらいだ。

…こないだ高校生の生徒と「日本人とアメリカ人の違いってなんだと思う?」という話をしていた。
帰国子女の彼女は少し考えた後、「アメリカ人は黒白ハッキリしていて、日本人はグレー」と答えた。

グレー。


つい先日も友人と「一つの場所にいるとその中で普通なことが基準になってしまって、他から見たらおかしいのに感覚が麻痺する。そういうのは怖いよね。」と話していたところだ。

日本人は、沢山集まると自分の考えや意見を封印する人が多いんだな、ということに私は今更気付いた。

それには良い局面もあるし、悪い局面もある。

例えば日本人はラインダンスなど、“一糸乱れず何かをする”のが得意だと言われている。(勿論ラインダンスをしているのは強い意志を持った、素晴らしい方々ばかりだから出来るのだが。)
確かに隣りを見なかったり、全体を考えなかったりしたらラインダンスは揃わないだろう。

物事をいい方向に進める時にはこの「グレーである」ということは良い方に機能する場合もある。

しかし、悪い方向に進んだ時は?

「グレーの集団」の恐ろしいところは、
「考えない、感じない。」ということだ。

その輪は悪い伝染病のようにどんどん広がり、「個」の考え方、感じ方は「麻痺」していく。

私は思う。

何も考えない、何も感じない、ということは、悪だ。
人を刺すのは、一つのナイフであるが、
少年にナイフを持たせたのは、
何も考えない、何も感じない『グレーの集団』である。

そしてそういう人達は罪に問われれば「私はやっていない。」と言うだろうし、
残酷なニュースを見れば、偏見に満ちた発言で非難するだろう。

自分はどこか高い丘の上で清潔に生きて行けていると勘違いしているのだ。

この作品の良かったところは、「“運命に選ばれし生まれながらの悪人”だけが殺人を犯すわけではない。」ということを描いてくれたことだと思う。

登場人物には感情移入出来なかったし、後味は全く良くなかったけど、
こうして映画を観た人間がそれぞれ考える事がこの映画が出す「宿題」かもしれないし、
その意見も含んだものが最終的にこの映画を完成させるかもしれない。

どんなに便利な時代になり、世界中の情報が手に入るようになっても、
考え方まで“どこかの誰かの意見をコピーペーストするだけ”になってしまうとしたら、全然豊かじゃない。

『告白』ハリウッドからリメイクのオファーが殺到しているそうだ。
松たか子さんのあえて薄いお化粧と、地味な服。
わざと抑えた抑揚のない話し方。

同じ制服を着て背格好も良く似た13歳の生徒たち。

グレー。

担任教師が金髪で、生徒は色んな人種がいるアメリカ映画になったら、あのグレーなトーンはどんな色を放つのだろう。

観終わってから色んな映画評を読んだ。
一人だけ、結末に対して同じ意見の方がいて、(ネタバレになるので多くの映画評は結末に触れていない)文章もキレイで嬉しくなった。

色んな人が、色んな角度で色んなことを、思える作品を傑作というのだろうか。

悪夢のような映画だったけれど、時間が経つと自分自身の怒りやトラウマがないまぜになった不思議な感情が炎となり、
胸の中には私自信の『本音』が、あぶりだしのように浮かび上がる。

何も書いていないように見えても、炎であぶると浮かび上がる文字。

見ないようにするのは簡単だけど、

私は見る。

『旋律』という曲を書いた時に決めたんだ。ちゃんと。

まだまだ色んなことを思っているし、思い続けるけど、
もし観た人がいて、会うことがあったら『告白』について語り合いたい。
また新しい角度で考えることができそうだ。

そしてこれはものすごく個人的な意見だけれど、女教師のあの役を中谷美紀さんが演じているのも、見てみたい。

この映画が見せるつながりが、楽しみだ。
| 映画 | 22:00 | comments(2) | trackbacks(0) | - | - |
Comment
今半分東京に住んでいて、東京について考える。

仲良くなると、あったかい。でも他人のままだと、時々悲しい。

最近ホントに思う。誰か、何と言おうと、自分のスタンスを持つというのは大事だと。

私は、『変なやつ』だし、それは仕方ないけど、私は絶対、人にそういう態度を取らないと決めた。

たくさん人がいても、それは『大勢』ではなく『ひとりひとり』なんだー。

2010/06/09 10:14 PM, from ありさ
☆ありさへ☆

そうそう、一人一人が集まるから意味があるんだ。

『告白』はありさに絶対観て欲しい映画だよ。
女教師の役は実力のある女優ならみんな挑戦したい役だと思う。

ただ、ありさは感受性が強いから一週間寝込む覚悟で!!(笑)
2010/06/09 11:36 PM, from ゆりな









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