芸術一家、松岡家の母の言葉。その1「身の丈を知る」
- 2016.10.03 Monday
- 03:49
自分の誕生日なのに、母の誕生日のケーキの写真を載せています“母の誕生日は4月です”singerでボイストレーナーの松岡ゆりなです。
前々から書きたかったことをどのタイミングで書くか迷っており、
いい歳して「生誕記念」として連載を(あくまでも気ままにスタートしたいと思います)。
私にはボイストレーニングに関する質問以外によく聞かれることの中に、
「どうして芸術一家になったんですか?」
「どうしてその歳でそんなに落ち着いているんですか?」
「どうしてもっとお金儲けや、贅沢をしようとしないんですか?」
というものがあります。
この秘密は全て、松岡家の母の教えに隠されています。
私が高校一年生の時まで遡ります。
ターイムトリップ!
私は中学生の頃、私学の女子校に通っており友人は皆、絵に描いたようなお金持ちでした。
海外に別荘。
家にはブランドものが溢れ、
新作の腕時計をしている子もいました。
一方で松岡家は建築家の父の関係で家はやたら広かったものの、兄弟が多いこともあり「質素堅実」な生活でした。
持っているものも、ほとんど姉からのお下がりやもらいもので、私は、
「姉の友人が要らなくなった財布」を使っていました。
それはそれで結構気に入っていて、中学の間ずっと使い、高校生になっても使っていました。
あまりに使いすぎて、財布がある日、半分に裂けたのです。
それを母に言うと、母は、
「じゃあ、新しいお財布買っておいで。」
と言ってお金をくれました。
きっと千円札がなかったのだと思いますが、一万円渡してくれたのです。
私は一万円なんて殆ど持ったことがなかったので、浮かれました。
「いいお財布が買える!」と思ったのです。
高校生一年生から京都市内の音楽学校に通っていた私は学校帰りに京都市内のデパートの財布売り場をくまなく見て回りました。
皆さんのご想像どおり、ほとんどの財布が一万円以上でした。
そんな中で、唯一コムサデモードのお財布が、
確か7000円くらいで見つかったのです。
これならお釣りも渡せる!
と、私はルンルンしながらそれを買って帰りました。
帰って母にその財布を見せ、お釣りを渡すと、
母は烈火の如く怒ったのです。
「高校生でそんないいお財布を買ってくるなんて!
身の丈を知りなさい!!」
ガーーーン!!!
でも、必死に一万円以下のお財布を探したのに…!!
それに、中学時代の友人はもっともっといい財布を使っていたのです。
私が自慢げに買って帰った財布は、
一気に私の愚かな行為の証となってしまったのです。
あまりにショックを受けていた私を見て、母が数日後、
「実はね、私も同じことをしたことがあるの。
お父さんが下宿している時に、
「カーテンを買ってきて」って一万円渡されてね。
当時の一万円だから今考えたらすごい値段よね。
でもお母さんは、「これでいいのが買える!」って本当に一万円くらいのカーテンを買ったの。
それを自慢げに見せたら、お父さんはがっくりしてね!
「全部使っちゃったのか?」って。
せっかく褒めてもらえると思ったのにショックだった。
だから、ゆりちゃんがお財布買って来た時に、
後でその時のことを思い出したのよ。
そのお財布、大事に使うのよ。」
お母さんはもう怒っていませんでした。
そこからしばらくして、私は高校生のうちからアルバイトをするようになりました。
アルバイトをし始めてからは、生活に必要な交通費や食費は援助してもらいながらも、
お小遣いは一切もらわなくなりました。
アルバイトのお給料日にはお母さんに小さなプレゼントを買って行くと、
お母さんは、
「せっかくもらったお金でそんなん買わなくていいのに。でも、ありがとう。」
と言って喜んでくれました。
最初にしたアルバイトはパン屋さんだったので、パンをもらって帰るとお母さんは喜んでくれました。
専門学校を卒業してからは、アルバイトのお金でレッスンに通いました。
自分のお金でレッスンに通うようになってからは特に、一回一回のレッスンを大切にするようになり、
出来るだけ贅沢をしないで、LIVEの衣装やCDや楽譜に使いました。
これも母の教えでもあるのですが、
「教育にはお金をかけるべき。」ということを私も大切にしました。
なので、私はいつもブランドもののお洋服を着せて、外食を食べさせ、テーマパークで遊ばせ、レッスンを休ませる親御さんを見ると、
とても驚きます。
だって単純に、もったいないと思うのです。
そこからお金を貯めては、全部はたいて作曲を習い機材を揃えたり、東京や海外にレッスンを受けに行ったりしました。
アルバイトをしながら、
何時間働いたらCDが買える!
何時間働いたらレッスンが1回受けられる!
と思っていました。
その感覚は今でも変わりません。
だから私は今もわりと質素堅実な生活をしています。
電車で移動しますし、
家でお料理もします。
贅沢といえばコーヒーくらい。
そして、これも両親から言われてきたことで、
人へのおもてなしやお祝いはケチケチせず、
しっかりやることにしています。
私が持っている「良いもの」は殆ど頂き物か、どうしても必要なもの。
でも、その母の教えのお陰で、
私はありとあらゆる素晴らしい先生方の指導を受けることが出来ましたし、
数々の"一流"の芸術を経験させて頂いてきました。
「教育にお金と時間をかけ、
感性と技術を一流に。
私生活は質素堅実に。」
をモットーに。
私達が小さい頃、贅沢品を何も買い与えなかった母は、
誕生日のたびに子供や孫に囲まれ、お祝いをしてもらっています。
それは母が時間や愛情だけはたっぷりかけて、
精神的にもっとも贅沢なやり方で私達を育ててくれたからです。
お母さん、ありがとう!!
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12月24日(土)
松岡ゆりなプロデュースクリスマスLIVE
詳細お待ちくださいませ♪
スケジュール空けておいてくださいね☆
素敵な言葉ですね!
ありがとうございます!