母とグラス

  • 2020.05.11 Monday
  • 00:14
IMG_6703.JPG

手からスルッと滑り落ちて、
床でパリンと割れる瞬間、 

その後の姉の「あー!」という声、

その少し後に片付けながら、
「ガラスは割れるからね。大切に使おうね。」
という母の言葉。


幼い頃のあの胸がギュッとなる気持ちを、
今でも鮮明に覚えている。


……それでも、私はグラスが好きだ。

歯があたるとヒビが入りそうな、
繊細なシャンパングラスは使うたびに箱にしまい、来客がある時には出してきて丁寧に洗う。

スタッキング出来るタイプのグラスは同じ形のをいくつも買って、常温のミネラルウォーターやとトマトジュース、

耐熱のデュラレックスは時には熱いコーヒーにも使う。

そして常温のハーブティーは時々こんな背の低い
グラスに入れて、気分でブルーベリーなどのフルーツを浮かべたりもする。

タフなワイングラスには冷たいカフェオレを飲むのも好きだ。


プラスチックのコップは、我が家には洗面所にしかない。

このプラコップも結構気に入っていて、
薄いピンクの透明のを2つ買い、
代わり番こに使っている。


幼い頃の、あの思いの意味を、
大人になって初めて知った。

小さい頃からプラスチックではなく、
ガラス製のコップを使うことで、

ホンモノを大切にする心、
落とすと割れることで物を大切にする心を、

育てるという、母の教育方針だったようだ。

小学校に上がってからは、
この敏感すぎる感性である自分に随分、難儀したものだが、

芸術家を育てたいという母の思いが、
見事に四姉妹全員を芸術家にしたのだから、

大したもんだ。

今でも曲を作るたび、
あの、グラスが手から滑り落ちて、
床に到達するまでの、

スローモーションになる感覚を思い出す。


こうした考え方や教育は、
今の時代は、なかなか難しい選択肢かもしれない。


先回りして、安全にと考えてしまうのが当たり前の思いだからだ。


私はいつの間にか、
見ただけで、そのグラスの強度がなんとなくわかるようななった。

繊細なようで割れにくいグラス、
頑丈なようで割れやすいグラス。


これって、

人の心や、
人との関係にも同じことが言えるかもしれない。

沢山の気持ちをスタッキングして、

ぶつかっても、
ぶつけられても、
冷たくされても、
熱く讃えられても、

強い自分でありたい。


お母さん、
いつもありがとう。

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